2023年7月4日に元IAEAの事務局長である天野之弥氏の後任となった ラファエル・マリアーノ・グロッシ氏が福島第一原発を視察しにやってくる。 新事務局長のラファエル氏多忙であることは間違いない。現在東欧でのザポリージャ原子力発電所の攻撃、福島原発の調査、中国の原子力発電所の汚染水の件についての対応力が求められているであろう。 現在、原子力発電所については各国が見切り発車で進めていたことの裏目がここ数年で顕著になっていると言える。
原子力発電とは
そもそも原子力発電とは何かお話をしよう。 原子力発電はウランもしくはプルトニウムなどの燃料棒を軽水炉等に入れ、 蒸発させた水蒸気をでタービンを回して電気を生み出すのが一般的な仕組みである。 火力発電所と発電の仕組みは一緒である。この燃料の作り方はまず天然ウランをガス化させ、遠心分離器で回すことによってウラン235とウラン238を分けウラン235を3%から5%に濃縮させたものを使う。 ちなみにこれを90%にまで濃縮させると原子爆弾になる。 ウラン使用後はプルトニウムが出てくるため再利用することができ、半永久的な燃料とできるのが原子力発電の最も大きなメリットとも言えるだろう。
原子力発電所が作れるなら…
つまりは、原子力発電所を作れると言う事は原子爆弾も作れるということである。各国が原子力発電所を作るために技術を提供してもらって実はその裏で核爆弾製造などされてはパワーバランスが崩れてしまう。そして抑止力として発足されたのがIAEAと言う機関である。
IAEA誕生
このIAEA 1953年にアイゼンハワー大統領が「平和のための原子力」を宣言した。核兵器製造に転用されないように見張る番人のような役割である。第二次世界大戦後すぐに冷戦がスタート。急速な軍拡に世界中で代理戦争が起こる中、積み重なる戦費。原子力発電のノウハウで稼ぎたいという邪な思いが感じられるのは私だけだろうか。IAEAと切っても切れない関係にあるのがNPT核拡散防止条約というものだ。 このNPT核拡散防止条約は、敗戦国にとっては残念な仕組みになっている。 第二次世界大戦の戦勝国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5カ国以外に関しての核拡散防止条約なのである。 この5カ国は核兵器を所有しても良いと言う国連のお墨付きのような虫の良い話になってしまっているのが懸念ではあるが、各国の対応としてはこれ以上核兵器を増やすわけにもいかないし、歯がゆい思いではあるけれども了承をした。
IAEAは正念場
しかし、このIAEAとNPTは肝心なところで作用していないという人もいる。例えばよく耳にする北朝鮮はIAEAとNPTに承諾することによって、原子力発電のための利用だと技術協力を仰ぎ、裏では核兵器を製造していた後にIAEAを脱退している。またイスラエルや パキスタン、インド、イランなどといった隣国による情勢不安が懸念されている国にとってはあまり効果がないようだ。 隣が持つなら自分もなければ怖いと思うのが人間なのかもしれないが。核は作らないと言って組織に入って、作ったら脱退では IAEAの意味がないのでは。「IAEAは、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする。」と言っている。促進だけではなく軍事的利用に関しても防止の強化をしてほしいものである。もうすでに証明されているが、戦争の戦略目標の一つに原子力発電所が加わっている。核兵器を使わなくてもその国の原子力発電所を攻撃すれば、核廃棄物も相まって同様の効果を生む可能性すらありうる。新事務局長の手腕が問われる。ラファエル氏はアルゼンチン生まれのカトリックであるそうだ。天使の加護があると良いのだが。
参考
「国際原子力機関の概要 外務省」
https://www.iaea.org/about/rafael-grossi ラファエル・マリアーノ・グロッシ
UnsplashのJonathan Ansel Moy de Vitryが撮影した写真
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