10年以上過ぎたギリシャ金融危機について

経済

夏は白い家に、青い海のコントラストがとても魅力的なエーゲ海の海岸沿いは観光客で賑わい。
かつては、東ローマ(ビザンツ)帝国も存在し、哲学者のアリストテレスら天才たちが誕生した国でもある。
そんなギリシャが2009年にEUを追い出されるかもしれない困難な状況にあったことを覚えている人はいるだろうか。 

フタを開けたら財政赤字が増えている!?

ギリシャは 2001年にコペンハーゲン基準を以ってEU諸国との市場競争に負けない経済圏を持ち財政赤字も懸念するほどではないとしてEU に参加した。
しかし政権が新しくなり旧政権により財政赤字が大幅に修正されていたのが発覚。
当時は財政赤字がGDP比で5%程度となっていたのに対して、実際は12.7%であった。
その後EUの調べに対して13.6%に上方修正されている。

EU としては観光業で栄えているギリシャはEU圏の人々にとっても関税を撤廃しユーロを導入することで双方にとって利益のあるものとして向かい入れたつもりであったが、実際は大変な爆弾を抱えてしまったことになる。

国債どうやって返済しようか?

EU、ギリシャ双方の問題は財政赤字をどのように返済していくかであるが、財政赤字が膨れ上がっている国の国債はなかなか売れない。国債が売れない。つまり借金ができないということは事業ができない。当然ではあるが、信用度の高い国であればあるほど国債は売りやすい。逆に信用度の少ない国債は利率を高くしないと買ってもらえない。もちろんデフォルトの可能性も含んでいるのは言わずもがな。

経済を回して財政赤字を返済していくにしても結局は資金がなければやっていけないので、こうした場合にはやはり国債を発行してでも経済を回していこうとするだろう。黒字化するにはやはりセオリー通り輸出で稼ぐと言うのが一般的。

しかしEUに加盟しているため かつてギリシャの通貨であったドラクマは存在しない。自分の国の通貨があれば通貨を大量に発行することによって自国通貨の価値を下げて輸出拡大といきたいところではあるがそれも叶わず。代わりにEU加盟の証であるユーロが存在するのだけれど、 こちらは欧州中央銀行が管理しているため手は出せない。

そうなってくると、もはや政府が取れる手段は国民の税金からなんとかやりくりするしかないのであるが、ギリシャは緊縮財政を行った際に国民からとんでもない反感を買ってしまった 。昔、連日テレビで火炎瓶を投げた男性や催涙ガスでデモを鎮圧する映像を見て観光どころじゃないなと思っていたのが懐かしい。

EUはどうして助けるの?

じゃあEUとしてはそんなお荷物はさっさとトカゲのしっぽのように切ってしまえばよかったのに、なぜそうしなかったのか、経済の点で考えるならEUの多くの国がギリシャの国債を買っていたためである。お金を貸したら返して貰わなければ利益が出ない。返してくれなければ大損である。ヨーロッパの多くの金融機関が悶えているのは想像に難くない。

EUは大急ぎでテコ入れを始めた。しかし、条件を提示してきた金を貸すギリシャに返済する意欲を見せよと。これが先ほどのデモに繋がってしまったのである。ギリシャは財政再建に奮闘し、同国は2018年8月に救済プログラムを完了した。計619億ユーロ(約7兆8200億円)もの融資であった。ギリシャ金融危機からおよそ8年あまりである。経済成長率(対GDP比)は8.4%(2021年:世銀)ギリシャの底力を見せつけられたような気がする。数々の賢人たちを生み出してきた国であることが垣間見える瞬間であったのは喜ばしい。

今後のギリシャはどうなる

現在、ND政権のキリアコス・ミツォタキス氏が首相である。父は元首相、姉は元外務大臣の政治家系であり、自身はハーバード大学、スタンフォード大学を出たエリートでもある。近年はコロナ、ウクライナ危機による物価高、列車事故をめぐり支持率の不安定感が気になる。イメージとは違うかもしれないが、ギリシャ国民はマルタを除くヨーロッパの国の中で最も労働時間が長い国であり、民主主義、発祥の地でもある。
ギリシャ国民は一筋縄ではいかなそうだ。今後のギリシャに注目していきたい。

参考
「外務省 ギリシャ基礎データ」
“Mitsotakis hoping to rule solo with victory in second Greek vote”. ロイター
“https://www.oecd.org/tokyo/statistics/hours-worked-japanese-version.htm”.OECD

使用写真
UnsplashJohnny Africaが撮影した写真

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